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SMAFで作る着信音−デイブ・ブリストウ
Dave's Ringtones for SMAF Vol.5
はじめに
第4回はMAシリーズ特有の音色合成から離れましたが、第5回は再び音源LSI内部の話に戻ります。そして今回は、SMAF着信音におけるPCMの役割について解説します。具体的には、"どんな" サウンドを "どのように" すれば、SMAFファイル(.mmf)に取り込むことができるか、という点について紹介します。

マニュアル等による解説では、MA音源LSIの機能や特徴の観点から "ボトムアップ"的な方法で基礎から順に行われますが、本連載ではそれとは違う"トップダウン"的なアプローチで解説します。PCM等の録音されたサウンドを使ってSMAFを作成する場合を代表例として取り上げ、何をどのように作成できるのかという点に焦点を絞って説明します。ここでは、以下にあげる、PCMに関する3つのよくある質問にお答えするにとどめます。
  • 他の音色と調和して自然に再生できる、ストリングスやコーラスなどのパッド系サウンドを、FM音源を用いずに作成する
  • ボーカルのコーラスライン、その楽曲の中で代表的なフレーズ、録音されたSE音を付加する
  • 波形データをSMAFファイル(.mmf)に変換する
他の音色と調和して自然に再生できる、ストリングスやコーラスなどのパッド系サウンドを、FM音源を用いずに作成する:
このようなときには、Voice Edit Windowを用いて普通に音色を作成しますが、その際FMタブに代わってPCMタブを使います。憶えておくべき重要なポイントは、以下の通りです。
  1. このようなPCMを用いた波形は、MA音源LSIの内部メモリを使用します。そのためひとつのSMAFファイル(.mmf)において、音色データとして利用できる波形データファイルのサイズ合計は、常に制限を受けることになります。無理なく機能するようなデータ量の上限は、オーサリングツール読み込み後の値で6KB前後ですが、可能ならばPCMサウンドのサイズをこの値より小さくなるようにしておく方が望ましいでしょう。

    例えば、サンプルのストリングス・サウンドのサイズ属性は、オーサリングツールのボイスエディット画面での読み込み前および読み込み後で、次の表のようになります。(AIFF(.aif)をダウンロードして、このサウンドを自分で取り込んでみて下さい)

もとのファイル属性
オーサリングツール取り込み後
サンプリングレート
ビット数
長さ
ファイルサイズ
ビット数
ファイルサイズ
22,050
16bit
1/3 second
15KB
4bit(ADPCM)
4KB
22,050
8bit
1/3 second
7.5KB
8bit
7.5KB


Strings4.vm3
(patch 0, user bank 1)
Download
Strings4.aif
Download
  1. もとの波形データファイルのサンプリングレートに制限はありません。オーサリングツールには、8bitまたは4bit ADPCMで読み込まれます。(けれども、サンプリング周波数は375の倍数となるように設定することをお勧めします。そうすれば、再生周波数から楽器用基準周波数が"もれる"心配がありません。)

  2. ループポイントの場合、AIFF(.aif)からのみオーサリングツールへの読み込みが可能で、Waveファイル(.wav)からはできません。

  3. いずれの場合も、オーサリングツールのボイスエディット画面で、ループの調整を行う必要が生じる場合があります。

  4. 波形データに依存しますが、Voice Edit Windowにある鍵盤の全音域で正しく発音するわけではありません。そのためサウンドとして上手く使える範囲は目安として2オクターブ程度となり、作成時にこのことを考慮しておかなければなりません。

  5. PCM音色は、FM音色やドラム音色データとともに音色データバンクに格納されているという点では、FM音色と違いがありません。どんなMIDIトラックからでも適切な音色データ番号を呼び出すことによって、普通に利用したり再生したりすることができます。
以上が、PCM音色作成の概要です。オーサリングツールでは、ボイスバンクセットを新規作成し、ユーザーバンクからいずれかの音色を選択します。その音色をダブルクリックして、ボイスエディット画面を開きます。"PCM Voice Edit"タブをクリックし、PCM用のエディット画面を表示させます。

"Load Wave File"ボタンをクリックし、先程準備した波形データファイルを探し出して、オーサリングツールに読み込みます(先に述べたファイルサイズのことを忘れないで下さい―またループポイントを読み込む場合にはAIFF(.aif)であることを確認して下さい)。音色パラメータの微調整を行う前に、サンプルのチューニングをチェックしてみます。読み込んだ波形データのピッチがC4(NoteNumber=60)でない場合は、デフォルトバンクから音程の分かりやすいGM音色を選択し、耳で確認するのが最も良い方法です。ピッチがC4ならば、チューニングは必要ありません。チューニングは、"Fs"と示されている枠の中の数値を調整することによって行います。ただし、”Fs”は375の倍数であることが望ましいため、チューニングは波形作成時に行うことを薦めます。その後、波形データファイルの取り込み、ループ作成を終えてはじめて、最終パラメータ調整に移ることができます。つまりPCM音色を完成に向けて磨き上げるために、LFO、エンベロープ、ボリューム、変調設定の調整を行います。




作成したPCM音色を保存し終わったら、キーボードから存分に音を出して、自分が望んでいるようなサウンドが作成できているかどうか確かめます。ここまできたら、優れたPCM音色を創る決め手は、(他の大部分のシステムと同様に) 上質の波形データであることが、もう分かったのではないかと思います。
ボーカルのコーラスライン、その楽曲の中で代表的なフレーズ、録音されたSE音を付加する:
この場合、付加するのは、おそらく録音されたフレーズとなるでしょう。楽器のように再生するというよりも、むしろ着信音の中で何度か繰り返して鳴らしたい場合がそうです。標準的な音符や楽器音よりも、時間的におそらくかなり長いものとなるでしょう。従って、PCM音色を作成し"内蔵して再生する"というやり方は、ファイルサイズの制限から、満足できる解決策とはなりません。この"サイズ"という問題に対処するために、SMAFでは、サウンドを"StreamPCM"という形でファイルに取り入れることができるようになっています。このとき波形データは、MA音源LSIの内部メモリには格納されず、携帯電話端末にある外部メモリに記憶され、SMAF MIDIデータのドラムチャンネル(バンクセレクトMSB 125)上の特殊な音符がトリガーとなって再生されます。波形データは外部的に記憶されますが、そのファイルの読出、再生のためのバッファとして、MA音源LSIの内部メモリを1KB確保する必要があります。ふたつのストリームの同時読出が可能で、その場合2KBのメモリが必要となります。オーサリングツールは自動で最大発音数を判断して最適なメモリ領域を使用します。

StreamPCM機能を用いる場合には、音色の作成は行いませんが、SMAFファイル(.mmf)に特別に取込まれた波形データのトリガーとしてドラムチャンネル上の音符を用います。憶えておくべき重要なポイントは、以下の通りです(以下をPCMのリストと比較してみると、その違いがはっきりとわかります)。
  1. ひとつのSMAFファイル(.mmf)においてStreamPCMとして利用できる波形データファイルのサイズ合計には理論上全く制限がありませんが、携帯電話端末のメモリには限界があります。しかしストリームごとに(最大2ストリーム)、読出バッファとしてMA音源LSIの内部メモリを1KBづつ使用します。
    注:連続的に再生する限りにおいては、実際にいくつものサウンドファイルを取り込むことができます!1または2というストリーム数は、同時に再生できるストリーム数を意味していると理解して下さい。

  2. データ転送レートが大きな要因となるため、もとの16bit波形データファイルのサンプリングレートには制限があります。オーサリングツールには、8bitまたは4bit ADPCMで読み込まれます。データ転送レート(サンプリングレート)の最大許容値の合計は、4bit ADPCM圧縮方式で取り込む場合、16KHzです。例をあげれば、以下のようになります。

    4bit ADPCMで取り込む場合、16KHzのサウンドファイルが1ストリーム
    4bit ADPCMで取り込む場合、8KHzのサウンドファイルが2ストリーム
    8bitで取り込む場合、8KHzのサウンドファイルが1ストリーム
    8bitで取り込む場合、4KHzのサウンドファイルが2ストリーム

  3. StreamPCMサウンドは、自動的にループしません。

  4. StreamPCM波形を、オーサリングツールを用いて編集することはできません。

  5. StreamPCMは鍵盤を用いて演奏するものではないため、画面上の鍵盤部分は使用できませんが、ドラムトラック上の特殊な音符がトリガーとなります。

  6. StreamPCMはFM音色とは全く異なります。ボイスバンクに"格納"されるのではなく、SMAFファイル(.mmf)に個別に取り込まれます。再生した場合、ピッチはもとのサウンドファイルのままで、変更できません。
StreamPCMを利用するために考案されたプロセスは、まず最初にSMAFファイル(.mmf)にSMF(.mid)を取り込み、その後サウンドファイルを取り込むという点で独特な方法です。オーサリングツールの最新バージョンが利用できるようになるまでは、以下のような方法で、StreamPCMを付加していました。まず.midファイルの取り込みから始めます。SMF(.mid)にデータは入っていなくても構いませんが、ドラムバンクを適切に備えたチャンネル10のドラムトラックが設定されていなければなりません。そのファイルをオーサリングツールに取り込んだ後、StreamPCMを付加するために、以下のような作業を行います。



ウインドウメニューからStream PCM Assign Mapを開きます。最初の部分(図参照)を右クリックして"New"を選択し、"Your mono .wav file"を選んで取り込みます(先に説明したサンプリングレートについて思い出して下さい)。サウンドファイルは、ウエーブID#1に取り込まれます。次の図は、ドラムトラックの音符が、どのように、取り込んだサウンドファイルのトリガーとして働くのかを示しています。



オーサリングツールを用いて、StreamPCMのトリガーとなる音符の概ねの位置を、ドラムトラック上で決定する必要があります。SMF(.mid)を取り込んだ後、StreamPCMを取り込み、オーサリングツールで再生します。トリガーのタイミングが少しずれているときは、SMF(.mid)に戻って音符の位置を調整し、SMF(.mid)を再保存します。その後、そのファイルをオーサリングツールに再び取り込み、オーサリングツールで再生してサウンドをもう一度チェックします。(StreamPCMは引き続き有効なので、再度取り込む必要はありません。)

オーサリングツールの最新版では、StreamPCMの取り扱いが、かなり簡単になりました。ですから、このホームページで提供される最新バージョンに更新してみて下さい。

最新版のオーサリングツールMA-3バージョン1.4(ソフトウェアツール)及びバージョン3.1(ハードウェアツール)を使えば、StreamPCMをいとも簡単に付加することができます!操作の考え方は全く同じです。SMFファイルの読み込みから始めますが、最新版では、StreamPCMの付加、位置決め、設定の全てがオーサリングツールの中でできるのです。SMFファイルを読み込んだ後、"Piano Roll"ボタンをクリックし、ピアノロールウインドウを開きます:



まず先程説明したやり方で、波形をStreamPCMアサインマップに読み込みます。読み込まれた波形は、最新版ではピアノロールウインドウの最下部にあるチャンネルにドラッグし、ファイルのどの位置にでも配置することができます。手順はこれだけで、StreamPCMのトリガーとなる音符を配置するために、MIDIファイルのドラムトラックにまで、さかのぼる必要はもうありません。アプリケーションウインドウのコントロールバー を用いれば、結果をSMAFオーサリングツールで再生し、直接聴いて確認することもできます。すごいと思いませんか!
サウンドファイルを直接SMAFファイルに変換する:

これは、このYamaha SMAF GLOBALサイトからダウンロードできるコンバートツールを利用すれば、クリック1回の操作で行うことができます。前述のプロセスを自動的に実行するもので、トリガー用の音符ひとつで"データの入っていない".midファイルを作成します。そのトリガーは、取り込もうとするサウンドファイルと同じ長さとなります。その後この.midファイルは、SMAFファイルを構成するベースとして、取り込んだサウンドとともに自動的に使用されます。ツールを使用する手順は、簡単明瞭です。準備したサウンドファイルをWscMA3コンバートツールの上にドラッグするだけで、SMAFファイル(.mmf)が自動的に生成されます。

しかし、例えば2つのストリームを用いたり、複数のストリームを様々な順序で再生したりするなど、もう少し複雑なことをする場合は、"データの入っていない".midファイルを自分で作成し、StreamPCMのトリガーとなる音符の位置を手動で調整しなければなりません。

このようにPCMなどの録音されたサウンドは、MA/SMAF着信音にとって欠くことができないものです。サウンド選択の幅を広げるために、また着信音開発の世界でSMAFが中心的役割を果たし続けるためにも、確かに必要なものです。ところがPCMサウンドは全て、メモリ上の制限があるため、何らかの圧縮が必要となります。ですから、鮮明で輝きのあるユニークなサウンドを徹底的に追求しようとすれば、FM音源に目を向けざるを得ません。PCM機能は、録音されたサウンドの持つリアル感をSMAF着信音に確実に取り込むことができるように、用意されているのです。次回は、汎用のSMFファイルを素晴らしいサウンドを持ったSMAF着信音へと変える方法について検討します。

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