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SMAFで作る着信音−デイブ・ブリストウ
Dave's Ringtones for SMAF Vol.3
はじめに

先月は、FM音源を直観的に理解し、様々なサウンドチャンクを特定して操作してみる方法についてお話ししました。実践的で役立つ手法をお教えした訳ですが、オペレータとオペレータの間で実際に何が起こっているのか、オペレータはどのようにして他のオペレータのサウンドを変化させるのかといったいくつかの疑問については、まだお答えできていません。

実践こそが、FM音源での音色設定を理解する最も確かな方法だと私は考えています。しかし、その裏にある理論を少しでも知っていると、微調整しようとしたり、新たな音づくりに取り組んだりするときに、サウンドがどうなるかが予想できて大いに役立つのです。FM音源の理論は、理解しにくいものではありません。特に倍音 という観点からサウンドをとらえられれば難しくはありません。そこで今回は、FM音源がどのように作動するのかを考えてみることにしましょう。

FM合成はかなり複雑だと言われていますが、サウンドを決めるのは、たったふたつの基本パラメータ、すなわち変調指数と周波数比なのです。

  1. 変調指数(Modulation Index) - モジュレータがキャリアを変調する、その量を指しています。モジュレータの出力レベルと直接関係し、オーサリングツールのボイスエディット画面のTL (トータルレベルの略)に該当します。当然キャリアは何の変調もしませんから、その出力レベルはそのままオーディオ出力レベルとなります。
  2. 周波数比(Frequency Ratio) - モジュレータの周波数とキャリアの周波数の比を指し、通常は整数で表されます。周波数の単位はヘルツで、オペレータの周波数は、周波数比の値と演奏されている音符(あるいはMIDIノートナンバー)の周波数を掛け合わせたものです。オーサリングツールのボイスエディット画面では、MULT (マルチプライヤ[乗算器]の略)が該当します。

このふたつが、FM音源の主な基本変数です。エンベロープやLFO(低周波発振回路)等も、これらの基本変数をコントロールする別の方法に過ぎません。MAシリーズのFMシンセには、実際のところ、オペレータ波形という第3の変数があるという点に触れるべきなのですが、理論を説明する際に煩雑にならないように、オペレータはサイン波を生成するように設定されている場合のみを考えることにします。

それでは、最初は変調指数から、アルゴリズムの内部をのぞいてみることにしましょう。実際の数学的説明は簡略化していますが、耳で聞いて確かめたり、基本的な部分をある程度理解したりするのには十分な正確さです。

変調指数(Modulation Index)

ふたつのオペレータから構成されるアルゴリズムの場合で考えてみます。それぞれのオペレータは同じ周波数のサイン波を生成しているものとします。周波数比の値がそれぞれ1となっていれば、それぞれのオペレータが、鍵盤で弾いている音程の1倍の周波数のサウンド(サイン波)を生成していることを意味します。変調指数とは、モジュレータがキャリアを変調する量のことを指し、モジュレータの出力レベルに直接関係します。

それでは、ミドルC (中央ハ音、261.5Hz)を鍵盤で弾いて、変調指数をゼロから徐々にあげていったとき、このふたつのオペレータの出力はどうなるのでしょうか。変調指数がゼロのとき、キャリアからは、261.5Hz (ミドルC)のサイン波が出力されるだけです。ところが変調指数をあげると、(ちょうどFMラジオのように)キャリア周波数の整数倍のところに側波帯、すなわち倍音が現れ始めます。さらに変調指数をあげると、より多くの倍音が生成されます。変調指数が増加するにつれて、中心周波数(キャリア周波数)から次々と波紋のように広がって現れてくるのです。図1を見てください。

DIAGRAM 1

右側の側波帯の倍音は、標準的な周波数スペクトル(静的な音 を表現するために用いる、おそらく最も一般的な技術的方法)の一部として理解できると思います。左側の側波帯については、どうでしょうか。"負"の周波数を持つ倍音とは、何なのでしょうか。0Hzの周波数の倍音とは何を意味するのでしょうか。実は、0Hzの倍音は存在しません。周波数がなければ、何も聞こえないのです。負の周波数は、位相の異なるサイン波を示しているに過ぎません。図2に示すように、0Hz点を中心として対称の位置にある、正の周波数成分と組み合わせて考えればよいのです。

対称の位置にある倍音が組み合わさったとき、実際には、単純に足し合わせた結果となる訳ではなく、エネルギーが増加する側波帯もあれば、減少する側波帯もあります。数学的に説明すると、本当はもう少し複雑になります。とはいっても変調指数が増加するにつれて、やはり帯域幅は、全般的に非線形に拡大していきます。聞いてみるとサウンドを明るくする効果があるのがわかりますが、その明るくなる過程は複雑で、フィルターを通した場合とは違って聞こえます。こういった特徴をもっているため、FM音源はサウンド的にとても興味深いものなのです。図3を見れば、変調指数が増加するにつれて、どのように余分の倍音が付け加わっていくか、その感じがつかめると思います。変調指数の増加に伴って、基本周波数周辺の倍音のエネルギーが上下する様子に注目してください。

要するに、変調指数はふたつのオペレータが作り出す倍音の数、あるいはスペクトルの周波数帯域幅を決定するのです。

DIAGRAM 2
DIAGRAM 3
周波数比(Frequency Ratio)を変更する
DIAGRAM 4

周波数比には、どのような意味があるのでしょうか。周波数比は、FM音源におけるもうひとつの基本変数です。そこでオペレータ間の周波数比が1:1でない場合に、どのようなことが起こるのかを考えてみることにしましょう。図4は、周波数比が2:1の例です。変調指数は側波帯がきちんと現れるようなレベルに設定されていますが、今回の場合は、側波帯の間隔がキャリア周波数の2倍となっています。前述の例と同じように、負の側波帯と0Hz点を中心として対称の位置にある正の側波帯とを組み合わせれば、標準的な周波数スペクトルが構成されます。ところが、この例では、倍音の並びがひとつおきとなっています。その結果"クラリネットのような"あるいは"こもった"特徴的なサウンドとなります。倍音の数、あるいは帯域幅は、やはり変調指数(モジュレータの出力レベル)によって決まります。

DIAGRAM 5

さらにもうひとつ、典型的な周波数比の場合を考えてみましょう。キャリアの数値がモジュレータの数値よりも大きい場合です。この例では、周波数比を1:4とします。キャリアは弾いている音の4倍の周波数のサイン波を、モジュレータは同じ周波数のサイン波を生成します。まず変調指数がゼロの場合を考えてみると、4×261.5Hzのサイン波が聞こえます(ミドルCを弾いている場合)。

DIAGRAM 6

図6に示したように、結果は非常に異なる形となり、側波帯がより均等にキャリア周波数の周辺に集まっています。しかし重要なのは、この例の場合、基本周波数とキャリア周波数とが同じではないという点です。倍音の間隔は、やはり1×261.5Hz (モジュレータ比の値と弾いている音の周波数をかけたもの) です。そして倍音列を規定し、実際に聞こえたり、認知できたりする音が何なのかを決めるのは、この間隔なのです。キャリアとモジュレータの周波数比が整数比の場合、倍音列の間隔はふたつの数値の最小公分母となります。最小公分母は通常1ですから、聞こえる基音は、弾いている音の(1倍の)周波数ということになるのです。例えば周波数比5:3のスペクトルを作成して、テストしてみてください。負の側波帯の対称移動を考慮しても、倍音は、やはり弾いている音の1倍の間隔の周波数列に重なることがわかります。

要約すると、キャリア、モジュレータ間の周波数比は、スペクトル内にどのような倍音が現れるかを決めるもので、変調指数(モジュレータの出力)の方は、倍音の数やそのエネルギーあるいはレベルを決めます。2個のオペレータだけの単純な構成からでも、これらふたつのパラメータをコントロールすることで、非常にバラエティに富んだサウンドを作成することができます。サウンドにダイナミックな変化を与えたいならば、それぞれのオペレータ出力にエンベロープを設定し、時間の経過に伴って変調指数を変化させればよいのです。これを実例で示すために、適当な練習課題をいくつか用意しました。これにトライして、理論がどのように働くのか、実際に自分の耳で聞いて確かめてみてください。

練習課題と実例

2オペレータの音色"Melody(メロディ)"を新規に開きます。どのボイスバンクからでも構いません。その後図7にしたがってパラメータを設定します(赤色で示した部分は、初期値と異なっているため、変更が必要です)。もうひとつの方法としては、EARTRAINING.vm3をダウンロードし、オーサリングツールで一番上の欄を開いてください。

EARTRAINING.vm3
Download


DIAGRAM 7

設定が終わったら、次の練習課題を試してみてください。FM合成作業で用いる基本的なパラメータに親しむことができ、様々なサウンドを創り出す上で、大いに役立つと思います。

  • FMサウンドの練習課題1:変調指数
    Operator 1を選択します。TLをクリックして、アクティブ(使用可能な状態)にします。TL値を調整するためには、コンピュータのキーボードの上下または左右の矢印キーを用います。同時に画面上の鍵盤のC5音を繰り返しクリックして、サウンドを聴きます。このようにすれば、周波数比1:1に設定されたふたつのオペレータ間の変調指数を変えたときの効果を確認することができます。このときの音色の変化を十分に把握してください。
  • FMサウンドの練習課題2:モジュレータ比
    Operator 1 (モジュレータ)のTLの値を30前後に設定します。MULTのスライドバー(調節つまみ)をクリックしてアクティブにし、コンピュータのキーボードの矢印キーを用いて、周波数比を1から15の間で上下させます。このときの音色の変化を十分に把握してください。
  • FMサウンドの練習課題3:キャリア比
    Operator 1のMULT値を1に戻した後、Operator 2タブをクリックして、Operator 2を選択表示します。MULTのスライドバーをクリックして、その値を15にあげた後、元の値に戻します。このときの音色の変化を十分に把握してください。また、モジュレータの比を変化させた場合との違いに注意してください。
  • FMサウンドの練習課題4:モジュレータへのフィードバック
    Operator 2のMULT値を1に戻した後、Operator 1タブをクリックして、Operator 1を選択表示します。TL値の設定を30前後にしたままで、オペレータコントロールパネルの右側にあるFB(フィードバック)を選択します。FBのスライドバーをクリックしてアクティブにし、矢印キーを用いて値を7にあげた後、元の値に戻します。このときの音色の変化を十分に把握してください。また、変調指数を変化させた場合との共通点や違いに注意してください。
  • FMサウンドの練習課題5:モジュレータでのエンベロープ生成
    Operator 1のFB値を0に戻します。Operator 1のTL値(出力レベル)を20前後に設定した後、アタックレート(AR)のスライドバーをクリックしてアクティブにします。続いてAR値を15から1に下げた後、元の値に戻します。サウンドのアタック部分の音色を全体的に変化させる効果があることに注意してください。[また後ほどこの課題5に戻って,今度はFBを7、TLを30に設定し、同じ操作を行ってみてください。AR値を8あるいは9前後に下げたとき"brass(ブラス)"の音色になるのがわかりますか。]
  • FMサウンドの練習課題6:キャリアでのエンベロープ生成
    Operator 1のAR値を15に戻した後、Operator 2タブをクリックして、Operator 2を選択表示します。続いてOperator 2のARをクリックしてアクティブにし、矢印キーを用いてAR値を1に合わせた後、元の値に戻します。サウンドのアタック部分の音量を全体的に変化させる効果があることに注意してください。 。このようにすれば、ご自分のトラックにぴったりと合うようにFM音色を微調整することがすぐにできるようになります。質問があるときは「フォーラム」にて代表的な質問について回答させていただきます。次回は基礎となるFM音源の理論をざっと眺めたうえで、オペレータ間で実際に何が行なわれているのかを説明します。

これらの練習課題に1時間ばかりじっくりと腰をすえて取り組み、音色がどのように変化するかをしっかりと確認するだけの根気があれば、まずはFMプログラミングを順調に習得しつつあるといえるでしょう。後は、このような音の基本と他のパラメータとがどのように結び付いているかを知ればよいだけです。練習課題に取り組む時間がないときは、デモファイル(EARTRAINING_mmf.zip)をざっと聞いてみてください。

3種類の単純な連続音が聞こえます。最初は、変調指数の変化の例で、2番目と3番目は変調指数を一定に保ち、それぞれモジュレータ比、キャリア比を変化させた場合の例になっています。

次回は、新たなサウンドや効果を創り出すうえで、MIDIプログラミングがどのように利用できるかを説明します。

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Copyright(c) 2008 Yamaha Corporation. All rights reserved.
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