先月は、FM音源を直観的に理解し、様々なサウンドチャンクを特定して操作してみる方法についてお話ししました。実践的で役立つ手法をお教えした訳ですが、オペレータとオペレータの間で実際に何が起こっているのか、オペレータはどのようにして他のオペレータのサウンドを変化させるのかといったいくつかの疑問については、まだお答えできていません。
実践こそが、FM音源での音色設定を理解する最も確かな方法だと私は考えています。しかし、その裏にある理論を少しでも知っていると、微調整しようとしたり、新たな音づくりに取り組んだりするときに、サウンドがどうなるかが予想できて大いに役立つのです。FM音源の理論は、理解しにくいものではありません。特に倍音 という観点からサウンドをとらえられれば難しくはありません。そこで今回は、FM音源がどのように作動するのかを考えてみることにしましょう。
FM合成はかなり複雑だと言われていますが、サウンドを決めるのは、たったふたつの基本パラメータ、すなわち変調指数と周波数比なのです。
- 変調指数(Modulation Index) - モジュレータがキャリアを変調する、その量を指しています。モジュレータの出力レベルと直接関係し、オーサリングツールのボイスエディット画面のTL (トータルレベルの略)に該当します。当然キャリアは何の変調もしませんから、その出力レベルはそのままオーディオ出力レベルとなります。
- 周波数比(Frequency Ratio) - モジュレータの周波数とキャリアの周波数の比を指し、通常は整数で表されます。周波数の単位はヘルツで、オペレータの周波数は、周波数比の値と演奏されている音符(あるいはMIDIノートナンバー)の周波数を掛け合わせたものです。オーサリングツールのボイスエディット画面では、MULT (マルチプライヤ[乗算器]の略)が該当します。
このふたつが、FM音源の主な基本変数です。エンベロープやLFO(低周波発振回路)等も、これらの基本変数をコントロールする別の方法に過ぎません。MAシリーズのFMシンセには、実際のところ、オペレータ波形という第3の変数があるという点に触れるべきなのですが、理論を説明する際に煩雑にならないように、オペレータはサイン波を生成するように設定されている場合のみを考えることにします。
それでは、最初は変調指数から、アルゴリズムの内部をのぞいてみることにしましょう。実際の数学的説明は簡略化していますが、耳で聞いて確かめたり、基本的な部分をある程度理解したりするのには十分な正確さです。



