Yamaha SMAF GLOBAL
ホーム SMAFとは? ツール ヒント&テクニック サポート
SMAFで作る着信音−デイブ・ブリストウ
Dave's Ringtones for SMAF Vol.2
はじめに
着信メロディの作成について、前回は幅広い視点に立って、携帯電話のオーディオの品質、利用者ニーズというふたつの側面からお話ししました。第2回目では、MA音源LSIに焦点を当て、MAオーディオエンジンの最も重要な機能のひとつであるFMシンセサイザーに挑戦してみましょう。何百万人が購入する携帯電話にパラメトリック・シンセサイザー(変数によってコントロールできるシンセサイザー)が内蔵されていることは、電子音楽史上、特筆に値する実に画期的な出来事と言えるでしょう。

MAオーディオエンジンにFMシンセが内蔵されていることのメリットは、なんでしょうか? 重要なポイントは次のふたつです。
  1. 着信メロディの利用を目的として、ユニークな音色を創り出すことができます―MAシリーズのFMシンセには、編集可能な70以上コントローラーがあり、サウンドの作成、変更に利用することができます。
  2. FMシンセは、音のクリアさが抜群です。オーディオ出力は、一連のFMパラメータからリアルタイムに"計算"されるため、ウエーブテーブル合成のように大量のデータを記憶しておいたり、読み出したりする必要がありません。つまり最高のクオリティを実現しているのです。現実にFM出力のサンプリング・レートは48kHzで、理論上はCDよりも優れています。
ところがFM合成は複雑で扱うのが難しいのではないかと考える開発者もいて、その結果、前述のようなメリットを十分に活かしきれないでいます。実際には、FMは、単純な基本コントローラーで操作できる、非常に分かりやすい合成手法なのです。ただし、フィルターやウエーブテーブル・システムに馴染んでいるプログラマーには、幾分使いにくく見えるかもしれません。このような開発者には「FM音色を素早く変更するにはどうすればよいのか、例えば音色をより明るくしたり、金属的に響く成分を減らしたり、一層滑らかにするにはどうしたらよいか」という疑問を解決できれば、FM合成のメリットを理解していただけると思います。

さて今回は、この問いに答えるために、FM音源を把握する直観的なやり方を説明し、FM音源をより身近に感じていただこうと考えています。また、いくつかの簡単な実例によって、音色を微調整する方法も紹介します。次回は、基礎となるFM音源の理論に目を向けることによって、知識をさらに深めるとともに、耳のトレーニングも行いたいと思います。このようにして今回と次回の2回でFM音源の秘密を解き明かしてゆけば、FM音源と気楽に付き合えるようになり、そのメリットを着信メロディづくりに活かせるようになるでしょう。
FM音源を直観的に探ることから始めよう
FM音源の操作では、合成モデルを個別のサウンド"チャンク"へと分割することで簡単になります。サウンドチャンクとは、最終的な音色を構成するいくつかのサウンド成分を指します。アルゴリズムを見て、こうしたチャンクを特定してしまいさえすれば、後は単にそれぞれのチャンクの出力を上げ下げしたり、スイッチをオン・オフしたりして、結果がどうなるかを聴いてみるだけです。そのためには、サウンドがどのようなアルゴリズムで組み立てられるかを理解すると同時に、そのアルゴリズムの中をどのように"流れていく"のかを理解する必要があります。次の図の"アルゴリズム"を見てみましょう。オペレータがどのように接続されているかを示しています。

DIAGRAM 1

まず、それぞれのオペレータは、基本的には非常に単純な発振回路で、正弦波(サイン波)を作り出す能力を持っています(その他の波形も出力可能ですが、説明が煩雑にならないように、取りあえず波形は一種類ということにしておきましょう)。サウンドは、各オペレータを左から右へと流れ、接続回路を経由して右端の出力に達するまで、サウンドが流れる各オペレータの出力を"明るく"すると考えていただければ結構です。出力を"明るく"するのは、FMプロセスの作用です。オペレータを"経由する"ことなく、システムからサウンドが出力されることはありません。オペレータには、その状態に応じて、ふたつの呼び方があります。オーディオ出力に直結しているときは"キャリア"、他のオペレータの入力に接続されているときは"モジュレータ"と呼びます。オペレータのスイッチをオフにしたときや出力を最小にしたときには、サウンドが、該当するオペレータから出力されたり、中を通り抜けたりすることはありません。このようにして、個々のオペレータがサウンドにどのような効果を与えているかを簡単に知ることができます。図に示されているオペレータ構成、すなわちアルゴリズムの例では、その動作は次のようになります。
  • オペレータ4はサウンドを出力し、その出力がオーディオ出力に直結されています。アルゴリズムに示される通り、全てのサウンドは、このオペレータを経由して流れます。そのため、このオペレータの出力レベルとエンベロープが"マスター"ボリューム・コントローラーとして働きます。
  • オペレータ3からのサウンドはオペレータ4へと流れ、オペレータ4が出力を変調し、サウンドを明るくします。オペレータ3の出力レベルとエンベロープが、オペレータ3からオペレータ4に流れるサウンドの量を決定します。
  • 同様に、オペレータ2から流れ込むサウンドによって変調され、明るくなった後のサウンドが、オペレータ3から流れ出ています。
  • 図1のアルゴリズムの上段を流れてゆくオペレータ1からのサウンドは、やがてオペレータ3からのサウンドと一緒になってオペレータ4へと流れ込み、オペレータ3と同様に、オペレータ4に対して独自の効果を付加します。
  • 最後に、オペレータ1の回りにある小さな正方形の輪は"フィードバック"を示しています。オペレータ1から流れ出たサウンドは、再びオペレータ1に流れ込みます(あたかも上流にオペレータ1の複製が存在しているかのようです)。その出力が接続回路を経て受け渡され、オペレータ4のサウンドを変調します。
次の図で、さらにふたつのアルゴリズムを示します。それぞれのアルゴリズムにおけるサウンドの流れを少し考えてみて、各オペレータがサウンドにどんな影響を与えるかを自問してみてください。

DIAGRAM 2, DIAGRAM 3
練習問題を解いてみよう...
問題:それぞれの例で、オペレータ3のスイッチを切った場合、どのようなことが起こりますか?
回答:図3のアルゴリズム4の場合、オペレータ4はサウンドを出力しますが、変調されることは全くありません。もしオペレータ4の設定がサイン波であれば、それがそのまま出力されます。図2のアルゴリズム5の場合、オペレータ3と4のペアからは完全にサウンドが出力されなくなりますが、オペレータ1と2のペアは全く影響を受けずにサウンドを出力しつづけます。さらにオペレータ1が、オペレータ2のサウンドを変調しています。
FM音色は、ベース、エレクトリック・ピアノ、ブラス、プラック音、ベル/メタリック音、そして特殊なドラムに向いています。一方PCMは、ストリングス、パッド、コーラス、アコースティック・ピアノ、アコースティック・ドラム、オーディオ・ループなどに、より適しています。前述のように、PCMにはふたつの用途があります。ウエーブテーブル・シンセサウンドとストリームPCMです。サウンド(waveファイル)が短い場合や楽器音を持続させてループ処理をしたり、エンベロープを付け加えたり、異なるピッチで再生したい場合は、PCMウェーブ・シンセサウンドを作成すればよいでしょう。サウンドチャンク(例えばドラム)のループ処理や、ボーカル・トラックの大きなパートを挿入したい場合は、ストリームPCM、つまりドラム・トラック上の音符をトリガーにして外部サウンドファイルを再生できる手法を用いればよいでしょう。
実際に操作してみよう...
ここまで書いてきた内容さえ理解していれば、様々なオペレータの出力レベルを調節するだけで、どんなFM音色でも、そのサウンド"チャンク"を特定し、操作することができます。このようなやり方で少し操作してみると、自分でも驚くほど簡単に、FM音色のコントロール方法の感触をつかむことができるでしょう。実際のところ、ほんのいくつかのコントローラーを操作するだけで、かなり効果的にサウンドを変化させることができるのです。
  1. キャリアの出力レベル(TL)−アルゴリズムの特定のチャンクの音量に影響を与えます。
  2. モジュレータの出力レベル−接続されているオペレータのブライトネス(明るさ) に影響を与えます。
  3. キャリアのアタックタイム(AR)およびリリースタイム(RR)−サウンドの音量の時間的変化に影響を与えます。
  4. モジュレータのアタックタイム(AR)およびリリースタイム(RR)−サウンドの"音質"の時間的変化に影響を与えます。
MA-3ボイスバンクからDavesWebExample2.vm3をダウンロードしてください。終了後、音色ファイルを開き、SMAFオーサリングツールに読み込みます。ユーザーバンク1の一番上の欄にある音色"FngrBass/SC"をダブルクリックすると、上記のコントローラーで音色を操作できるようになります。図4は、操作するコントローラーを見つけるための手順が示されています。最初の音色が終わったら、2番目の音色を試してみてください。別のアルゴリズムが用いられています。

DavesWebExample2.vm3
Download


DIAGRAM 4

操作は、それほど難しいものではないでしょう。このようにすれば、ご自分のトラックにぴったりと合うようにFM音色を微調整することがすぐにできるようになります。質問があるときは「フォーラム」にて代表的な質問について回答させていただきます。次回は基礎となるFM音源の理論をざっと眺めたうえで、オペレータ間で実際に何が行なわれているのかを説明します。
前ページ 次ページ
Dave's Tips for SMAF
Copyright(c) 2008 Yamaha Corporation. All rights reserved.
Copyright(c) 2008 Yamaha Corporation. All rights reserved.
ページのトップへ 利用規約 プライバシー規約 サイトマップ