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SMAFで作る着信音−デイブ・ブリストウ
Dave's Ringtones for SMAF Vol.1
はじめに
この連載記事では、SMAFを用いて思い通りの着信メロディが作成できるように、その理論と実際的な手法についてお話したいと思います。第1回目の今回は、これから取りかかるべき作業をざっと眺めてみることにします。まず、着信メロディの作成を始めるとき考えなければならない重要なポイントが、3つあります。
  1. 携帯電話端末 - 小さなスピーカーと騒がしいことが多い使用環境
  2. SMAF/MAオーディオエンジン - その可能性を知る
  3. そしてもちろん、利用者とその好み - 音楽のタイプ、電話が鳴っていることをはっきりと伝える着信メロディとしての役割、など
次回以降の記事ではMAオーディオエンジンに焦点を絞って説明する予定ですが、最初に全体を把握しておくことが大切なので、まずは上記の3つのポイントについて詳しく見てみましょう。
携帯電話端末
携帯電話端末そのものでは、どういった点が重要なのでしょうか? まず思い浮かぶのは、オーディオ空間がとても"小さい"ということです。つまり低音周波数域の再現性が悪かったり、あるいは全くなかったりすることに加え、再生はモノラルなのが一般的です(ステレオの場合でも、そのフィールドは狭い)。その結果、オーディオ空間がサウンドですぐに一杯になってしまい、サウンドどうしが干渉して聞こえなくなってしまうということが起こりやすいのです。このためオーディオフィールドの深みが損なわれてしまいます。そのうえ着信メロディが鳴ったとき、周囲が騒音や雑音に満ちていることが多く、その中でしっかりと聞こえなければならないのです。そして当然のことですが、結局のところ着信メロディなのですから、その音楽をいつも十分に鑑賞してもらえるとは限らないのです。

それでは、どうやってこれらの問題に取り組めばよいのでしょうか。最も役立つ方法は、おそらく、自分の携帯電話で聴いて、その都度確かめながら作業を進めることでしょう。着信メロディを作成するのなら、今すぐ目の前にある素敵なスタジオモニタのスイッチを切って、携帯電話端末のとても小さいスピーカーが提供してくれる小さなオーディオ空間に自らを没頭させるべきなのです。もし何らかの理由でそうすることができないときは、SMAFファイル(.mmf)を作成して、少なくとも500Hzまでの周波数を全て消してしまうとよいでしょう。携帯電話端末からおおよそどんな音が出てくるか、その目安になるはずです。もうひとつお勧めしたいのは、(スタジオの中で子供を遊ばせたり、窓を開け放ったりするなど)わざと騒がしい環境で聴いてみるという方法です。ばかばかしく聞こえるかもしれませんが、私の経験から役に立つと思います。こうすることで、作成したサウンドミックスの中のどの音色が、実際に聞こえるのかがわかります。せっかく多くの音を重ねてみても、その音がちょっとした周囲の環境によってかき消されてしまい、着信メロディとしては結果的に何のプラスにもなっていないということもあるのです。最後に付け加えておくと、私自身、普通はあまり多くの音を重ねないようにしています。というのは、それぞれのトラックがきちんと聴き取れて、繊細で面白いオーケストレーション効果が得られる場合よりも、特徴のない"FMオルガン"のようなサウンドで終わってしまうことが、むしろ多いからです。

携帯電話の着信メロディのための小さくて雑音の多いオーディオ空間に全く違和感を感じなくなってくれば、強力なSMAF/MAオーディオエンジンが狙い通りのサウンドを創るうえで必要なツールや様々な機能を備えていることに、お気づきになっていただけると思っています。
SMAF/MAオーディオエンジン
考えておくべき第二のポイントは、種々の優れた技術的機能を誇るSMAF/MAオーディオソリューションから、利用者が喜ぶような音楽の着信メロディを、どのようにして実際に創り出すかという点です。注目すべき最初の主要な機能は同時発音数で、MA-3では最大40音まで可能です。つまり複雑なオーケストレーションができる訳で、ドラム・トラックを作成するうえで重要な意味を持っているのです。またディレイエコーなどのMIDI効果を付加したり、音色を重ね合わせてより豊かなサウンドを創り出したりするうえで、必要十分な数の音符が利用できることにもなります。注目すべき次の機能は、FMシンセエンジンです。FM音色の利用は、着信メロディづくりに大きなメリットがあります。まずFMシンセは、携帯電話端末の方で非常に高いサンプリング・レート(48kHz)を実現しているため、FM音色がいつでもヌケのよいクリアな音で再生できるだけでなく、限られたメモリ容量の中では圧縮せざるをえないPCM再生とは異なり、サウンド圧縮の影響を受けないのです。またFMシンセサウンドは、本当のシンセ音なのです!そんなこと当たり前じゃないか、と思われるかもしれません。しかし言い換えれば、現代的で面白くユニークなサウンドを新たに創ることもできますし、携帯電話端末の小さなオーディオ空間の中でも一層の効果を発揮するように従来のサウンドを微調整したり、変更したりすることもできるということなのです。注目すべき最後の機能は、MA-3がハイブリッドシンセであり、録音した音源を利用するための手段であるPCM音色やストリームPCMの機能を持ったオーディオエンジンも搭載していることです。FMシンセだけの場合よりも、より自由で広いキャンバスが、サウンドづくりに使えるのです。この強力なハイブリッドシステムの音色設定上の特徴を知り尽くすこと、これが最高のSMAFファイル(.mmf)を創り出せるかどうかのカギなのです。どうすればふたつの異なるシンセエンジンを上手く使い分けられるのか、以下、私のやり方を紹介してみましょう。

FM音色は、ベース、エレクトリック・ピアノ、ブラス、プラック音、ベル/メタリック音、そして特殊なドラムに向いています。一方PCMは、ストリングス、パッド、コーラス、アコースティック・ピアノ、アコースティック・ドラム、オーディオ・ループなどに、より適しています。さきほど書きましたように、PCMにはふたつの使い方があります。ウエーブテーブル・シンセサウンドとストリームPCMです。サウンド(waveファイル)が短い場合や楽器音を持続させてループ処理をしたり、エンベロープを付け加えたり、異なるピッチで再生したい場合は、PCMウェーブ・シンセサウンドを作成すればよいでしょう。サウンドチャンク(例えばドラム)のループ処理や、ボーカル・トラックの大きなパートを挿入したい場合は、ストリームPCM、つまりドラム・トラック上の音符をトリガーにして外部サウンドファイルを再生させることができる手法を用いればよいでしょう。
サウンドサンプル
これらのサウンドサンプルは、昨年1年間にヤマハのサウンド・メロディ・ライブラリのために私が作成したSMAFファイル(.mmf)の中から選んだものです。
BigBoy.mmf
SMAFファイル(.mmf)
mp3ファイル(.mp3)
BigBoy.mid
BigBoy.vm3
BigBoy
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この小さなSMAFファイル(.mmf)は、簡単に"微調整"できる"フレットレス・ベース"的なサウンドを実現したもので、携帯電話端末の低音域で大きな効果を発揮します。

このサウンドサンプルの音色に変更を加えてみたい場合には、このページからダウンロードできる"BigBoy"のオリジナルSMF(.mid)とボイスファイル(.vm3)を、SMAFオーサリングツールを用いて変換しなければなりません。(もしハードウェア開発ツールをお持ちの場合は、SMAFファイル(.mmf)を直接開くことができます。)ファイルをダウンロードした後、ATSオーサリングツールを起動し、Fileメニューから"Open MA-3 Voice File ...[オープン・MA-3・ボイス・ファイル]"を選んで、BigBoy_dbw.vm3 を開きます。その後、Fileメニューから"Import from SMF...[インポート・フロム・SMF]"を選んで、BigBoy_dbw.mid を開きます。SMAFオーサリングツールのスコアウィンドウが表示され、音色の編集ができるようになります。

ボイスネーム"BigBoy"をクリックするとボイスエディット画面が表示され、音色の微調整ができるようになります。(チャンネルがふたつありますが、どちらでも同じように操作できます。これは、トラックをコピーして片方のピッチを少しずらせればできるデチューン・コーラス効果を出すために、同じ音色を二重に登録しているためです。) operator 1 [オペレータ・1]の出力レベルを調節してみましょう。ベース・サウンドのブライトネスが変化します。operator 2 [オペレータ・2]の出力レベルでは、ベース音のアタックに影響する"クリック"効果をコントロールすることができます。こんなちょっとした調節だけで、曲に合わせて美しく調和する特製のベース・サウンドが創り出せる、ということがおわかりいただけると思います。
Voice Edit Image
J-Walk.mmf
SMAFファイル(.mmf)
mp3ファイル(.mp3)
J-Walk.mid
J-Walk.vm3
J-Walk
Play Download Download Download
この着信メロディは、トランスのジャンルで何か作曲してみようとして作った作品なので、面白いとは思いますが、携帯電話端末のオーディオ面での厳しい制約を考えれば、おそらく本当は適切ではないでしょう。"スロッビング(ドクドクと脈打つ)"ベースは使えないし、アンビエントな雰囲気は創り出すのが難しい、その上、作品を盛り上げるのに10分もかける訳にはいかないのですから…! 始めの方で書いたように、携帯電話端末の着信メロディのためのオーディオ空間には、大きな制限があるのです。

いずれにせよ、このサンプルは、かつて難題に取り組み、そうして努力してみた結果のひとつなのです。静かなボーカルパッドに(PCMシンセ音として作成した)ループサウンド効果を組み合わせ、最初から最後まで続けることで、作品の雰囲気を作りあげています。これに対し高音域では、MIDIでノートディレイをかけてシンプルなエレクトリック・ピアノの演奏を十分際立たせるとともに、アンビエントな効果をさらに加えています。ベースやミュートをかけたギターのサウンドや軽やかなドラムが上手くフィットして、作品の流れを生みだしています。この作品で、私は、境界が曖昧な、アンビエントな雰囲気をつくりだそうと狙ったのです…。SMAFオーサリングツールを使って、サウンドを微調整したり、リミックスしてみたりしてください。今この作品を聴いてみると、雰囲気は好きなんですが、あまりにも繊細すぎて、着信メロディとしては恐らく相応しくないように感じます。みなさんは、どう思われるでしょうか?
利用者
最後に、受け手側で皆さんのプログラミングの成果を待ち受けているのはユーザーなのですから、そのニーズをいくらかでも把握しておくことが大切です。着信メロディは、電話が鳴ったということをはっきりと知らせてくれるか? 音の大きさは十分か? 特定の環境への適応などを含めて個性的で使いやすいものであるか? サウンドファイルは、ダウンロードに適したサイズか? これらは作業を始める前に考えておかなければならない重要なポイントの一例です。そしてこれらの点は、オーサリングツールを十分に理解し、使いこなすことによって、完璧に解決できます。作成する着信メロディはオリジナル作品の場合もあれば、最新ヒット曲をアレンジする場合もあるでしょうが、特に後者がダウンロードされる着信メロディの中で人気のあるものの大部分を占めているのです。既製の曲を使う場合は、利用できる短い時間の範囲内で、その曲の最も特徴的な部分を選んで切り取らなければなりません。また切り取った部分がSMAFオーディオエンジンに十分に適したものであるように注意する必要もあります。オリジナル作品の場合は、MAオーディオエンジンについて、徹底的に知りつくしている必要があります。オーディオ空間の小ささを理解し、利用者が何を望んでいるかを知りさえすれば、作成したSMAFファイル(.mmf)は、きっと魅力のある効果的な着信メロディとなるでしょう。
来月は、プログラミングの詳細についてより大きく取り上げるとともに、FM音源やそのメリット、効果的な使い方について、一層詳しく説明します。
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Copyright(c) 2008 Yamaha Corporation. All rights reserved.
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